あなたは、
- 相続財産の調査の進め方を知りたい
- 相続財産の調査を誰かに依頼できるのか知りたい
- 相続財産調査は自分ですべきか、誰かに依頼すべきかの基準が知りたい
とお考えではありませんか?
身近な人が突然亡くなれば、ほとんど知識もない状態で遺産相続の手続きをやることになります。遺言書がない場合は、まずどのような財産があるのか調べなければなりませんが、何から手をつけてよいか分かりませんよね。
結論から言うと、よほど時間に余裕のある方でない限り、相続財産の調査は専門家に依頼するのがオススメです。
なぜなら、相続財産の調査は複雑で大変な手間がかかるにも関わらず、死後3か月以内という短期間で終わらせる必要があるからです。
この記事を読めば、自分で相続財産を調査する具体的な進め方から依頼する専門家の選び方まで知ることができるので、今すぐやるべきことが分かります。
そこでこの記事では、
- 1章で相続財産調査を始める前に知っておくべきポイント
- 2章で相続財産調査の具体的な進め方
- 3章で専門家に依頼すべきケース
- 4章で依頼する専門家の選び方と費用の相場
について、詳しく解説します。
この記事を読んで、自分に合った方法を見つけ、相続財産調査を期限内に漏れなく確実に行いましょう。
1章:相続財産調査の前に知っておくべきポイント
相続財産調査を失敗しないためには、調査を始める前に全体像を把握しておくことが重要です。以下に、押さえておくべきポイントをまとめました。
相続財産調査とは | |
---|---|
調査内容 | 故人が所有する全財産を地道に1つずつ特定し、評価額を算出する |
目的 | 遺産分割の話し合いをスムーズに行うため |
借金の相続を避けるため | |
相続税の申告漏れを避けるため | |
不動産名義の変更漏れを避けるため | |
調査期限 | 期限はないが、死後3か月以内に終わらせるべき |
依頼できる専門家 | 税理士 |
弁護士 | |
司法書士 | |
行政書士 |
それぞれのポイントについて説明します。
1-1:相続財産調査は「故人の全財産を地道に調べる」こと
相続財産調査は、遺言書がなく相続財産に何があるのか分からない場合に、故人である被相続人の全財産を地道に調べることです。
全財産とは現金や預貯金だけでなく、不動産や株式などの権利まで幅広く含まれ、借金などのマイナスの財産も対象です。 これらの財産を一括で調べる方法はなく、所有しているかどうかを一つひとつ調べていくしかありません。
1-2:相続財産調査には4つの目的がある
相続財産調査には以下の4つの目的があります。
どれも後々のトラブルや不利益につながる可能性があるので、必ず理解しておきましょう。
それぞれ説明します。
■遺産分割の話し合いをスムーズに行うため
遺産分割の話し合いとは、相続人が複数いる場合に、相続財産(遺産)をどのように分けるか相続人同士で話し合うことです。
当然、どのような財産があるか分からないと話し合いができません。また、遺産分割の方法が決定した後に新たな財産が見つかれば、話し合いがやり直しになります。そのため、全財産を漏れなく把握する必要があります。
■借金の相続を避けるため
相続人は、プラスの財産だけでなく、借金などの負債も相続しなければなりません。ただし、期限内に家庭裁判所で「相続放棄」もしくは「限定承認」の手続きをとれば相続を避けられます。
「相続放棄」とは、プラスの財産もマイナスの財産もすべての相続を放棄することです。プラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多いときに選びます。
「限定承認」とは、プラスの財産の額を超えない範囲でマイナスの財産を相続することであり、相続人全員の合意が必要です。プラスかマイナスのどちらが多いか分からないときに選びます。
これらの手続きを行うかどうかを判断するためにも、全財産を把握する必要があります。
■相続税の申告漏れを避けるため
相続財産がある一定の額を超えると相続税を納めなければなりません。相続税の申告のときに、相続した額を誤って少なく申告すると、罰則として追加の税金が科せられる可能性があります。
相続税の申告漏れを避けるためにも、全財産を把握し、相続税の計算を正確に行う必要があるのです。
■不動産名義の変更漏れを避けるため
不動産を相続した場合、相続することを知ってから3年以内にその不動産の名義を変更(相続登記)することが義務とされています。
相続登記をしなかった場合は最大10万円のペナルティが科される可能性があります。
不動産名義の変更漏れを避けるためにも、相続財産調査ですべての不動産を把握する必要があるのです。
1-3:相続財産調査は死後3か月以内に終わらせる
「相続放棄」と「限定承認」の手続きの期限は相続を知った日(普通は死亡日)から3か月以内であるため、それまでに相続財産調査を終わらせましょう。
相続財産調査自体に期限はなく、相続税の申告期限である死後10か月以内には終わらせるのが基本です。
しかし、マイナスの財産には滞納している税金や連帯保証人となっている借金などもあり、思わぬところで見つかる可能性があるので、3か月以内に終わらせるべきです。
なお、死後3か月以内に「相続放棄」や「限定承認」の期限の延長(「熟慮期間の伸長」)について家庭裁判所に申し立てを行い、相当の理由があれば、認められる場合があります。
1-4:相続財産調査は専門家に依頼できる
相続財産調査は自分でもできますが、専門家に依頼もできます。具体的には、それぞれの事情に応じて司法書士、税理士、弁護士、司法書士から選びましょう。
自分で調査する場合の進め方は2章で説明しますが、多くの時間と手間がかかる作業になるため、専門家への依頼も検討することをオススメします。 専門家の選び方は4章で解説しているので、参考にしてください。
2章:相続財産調査の進め方8ステップ
自分で相続財産を調査する場合、具体的な進め方は以下の8ステップです。
① 対象となる財産を把握する
② 家の中にある手がかりを探して集める
③ 預貯金について調べる
④ 借金などの債務について調べる
⑤ 不動産について調べる
⑥ 有価証券その他の権利について調べる
⑦ 貴金属や自動車などの動産について調べる
⑧ 評価額を算出し財産目録を作成する
それぞれ説明します。
2-1:① 対象となる財産を把握する
まずは対象となる財産はどういうものがあるのか把握しましょう。プラスの財産とマイナスの財産について、それぞれ具体例を示します。
2-1-1:対象となるプラスの財産
プラスになる財産には、金銭的な価値があるもの、契約上の権利にあたるものは基本的にすべて含まれます。具体的には以下のようなものがあります。
- 現金・預貯金
- 不動産(土地、建物、借地権など)
- 有価証券(株式、債券、投資信託など)
- 権利(貸付金、ゴルフ会員権、リゾート権、特許権、著作権、営業権など)
- 動産(自動車、貴金属、骨董品、家財道具など)
なお、生命保険金や死亡退職金などは受取人の財産になり、遺産分割や相続放棄の対象にはなりませんが、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象です。
また、亡くなる前の3年以内に被相続人からもらった財産(生前贈与)は相続財産に含められ、相続税の対象となるので注意が必要です。
※現在の相続税の対象になる生前贈与の期間は「亡くなる前の3年以内」ですが、2027年1月1日以降は「2024年1月1日~死亡日」となり、2031年1月1日以降は「亡くなる前の7年以内」に変更されます。
2-1-2:対象となるマイナスの財産
マイナスの財産も相続対象になり、相続放棄をするかどうかの重要な判断材料になるため、漏れなく調べましょう。具体的には以下のようなものがあります。
- 住宅ローン
- カードローン
- 未払いの税金や医療費
- 未払いの家賃や地代
- 連帯保障債務
- 損害賠償債務
なお、住宅ローンは、団体信用生命保険に加入していれば保険金で完済されます。
2-2:② 家の中にある手がかりを探して集める
対象となる財産について理解したら、被相続人の家の中や事業所に手がかりとなるものがないか探しましょう。たとえば、以下のものがそれぞれの財産の手がかりになります。
対象の財産 | 手がかりの内容(例) |
---|---|
預貯金 | ・通帳、キャッシュカード ・金融機関からの郵便物、メール ・確定申告の書類 ・金融機関のサイトのブックマーク ・金融機関名のある粗品 |
債務 | ・通帳の引き落とし履歴 ・督促状 ・金融消費貸借契約書 ・借用書 |
不動産 | ・不動産権利証 ・登記資料 ・売買契約書 ・固定資産納税通知書 ・賃貸借契約書 |
有価証券 | ・証券会社からの郵便物 ・四半期報告書、半期報告書 ・通帳の取引履歴(配当金) ・株主総会招集通知書 |
その他権利 | ・会員権証書、会員向け郵便物 ・通帳の取引履歴(年会費、印税収入など) ・特許証 |
動産 | ・登録書類、購入書類 ・自動車検査証、保険証書 ・現物 |
いわゆる「タンス預金」も相続税の対象となるため、家の中をくまなく探してください。また、通帳に貸金庫の使用料の引き落としがあれば、支払い先の金融機関の貸金庫に重要な財産が保管されているかもしれません。相続人全員の同意や戸籍が必要ですが、早めに中身を確認しましょう。
なお、相続財産の消費や処分、名義変更などを行ってしまうと、相続の意思があるとみなされて「相続放棄」ができなくなるので注意してください。
2-3:③ 預貯金について調べる
手がかりが見つかったら、最初に預貯金から調べましょう。預貯金の取引履歴を見れば、株の配当金の入金や住宅ローンの引き落としなども確認できるため、その他の財産の手がかりにもなるからです。
具体的には、ステップ2で見つけた手がかりから口座があると予想される金融機関に問い合わせ、死亡日の預金残高証明書を発行してもらいましょう。手数料は700~2,200円ほどで、被相続人の死亡と届出人が相続人であることの証明書類(戸籍謄本)などが必要になり、発行には1~2週間ほどかかります。
ただし、問い合わせ前に注意すべきなのは、被相続人が亡くなったことを金融機関に伝えたら、その口座は直ちに凍結されて入出金ができなくなることです。被相続人が住んでいた家に他の同居人が引き続き住む場合は、水道・電気・ガス代の振替口座の名義変更を事前に済ませましょう。また、クレジットカードの引き落としの予定がないか、不動産の貸主として家賃の振込先になっていないかなども注意が必要です。
もし、どこに口座があるか手がかりがない場合は、近所に支店がある銀行やゆうちょ銀行、過去の利用履歴などから可能性のある金融機関をしらみつぶしにあたるしかありません。
2-4:④ 借金などの債務について調べる
次に、借金などの債務について調べましょう。「相続放棄」や「限定承認」の判断は3か月以内という期限があり、急いで把握する必要があるからです。
ステップ②で自宅内の手がかりを探すと同時に、以下の3つの信用情報機関に被相続人の借入先についての情報開示請求をしましょう。
- 全国銀行個人信用情報センター
(主に銀行からの借り入れの状況) - 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
(主にクレジット会社の契約内容や支払い状況) - 株式会社日本信用情報機構(JICC)
(主に消費者金融からの借り入れの状況)
手数料は1,000~1,500円で、被相続人の死亡と届出人が相続人であることの証明書類(戸籍謄本)などが必要になり、結果が届くまで1週間~20日ほどかかります。必要書類の準備期間を含めて、少なくとも1か月はかかると考えましょう。
なお、この調査では個人やヤミ金融からの借金、未払いの税金や家賃などの状況は分かりません。これらは地道に、自宅や事業所、PCなどに契約書類やメールがないか、通帳の引き落としがないかを調べたり、役所や家主に確認したりする必要があります。連帯保証人となっている債務がないかもよく確認しましょう。
借入先が特定できたら、直接問い合わせて死亡日の借入金残高証明書を発行してもらいましょう。そのとき、返済を催促されたからといって一度でも支払うと相続を承認したとみなされ、「相続放棄」ができなくなるので注意してください。
2-5:⑤ 不動産について調べる
次に、不動産について調べましょう。正確な把握が難しく評価額の計算にも時間がかかるため、不動産の調査も早めに始める必要があります。
ステップ②で手がかりが見つからない場合やすべてを把握しきれない場合には、市区町村の役場から「名寄帳」を取得しましょう。
「名寄帳」では、課税対象にならないものや共有名義のものも含め、被相続人が所有する不動産を一覧で見られます。ただし、市区町村単位で管理されているため、不動産が所在する市区町村ごとに取得が必要です。また、その年の1月1日時点の情報であるため、それ以降に被相続人が取得した不動産は記載されていません。
手数料は200~300円ほどで、被相続人の死亡と届出人が相続人であることの証明書類(戸籍謄本)などが必要です。手続きのときには、共有名義の不動産の情報が漏れていないかどうか、必ず確認してください。
ステップ2の手がかりや「名寄帳」から所有する不動産の「地番」や「家屋番号」が特定できたら、登記簿謄本を法務局で取得し、所有者と抵当権を確認します。最近は、以下のサイトで登記情報を簡単に確認できるサービスもあります。
≫ 登記情報提供サービス
なお、同じ住所でも建物と土地で所有者が違う場合は借地権があると考えられ、借地権も相続財産なので注意しましょう。
2-6:⑥ 有価証券その他の権利について調べる
次に、有価証券やその他の権利について調べましょう。
上場株式の場合、ステップ②で見つけた手がかりから取引があったと思われる証券会社や信託銀行に問い合わせ、死亡日の残高証明書を発行してもらいます。
取引した機関が分からなくても、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」に情報開示請求すれば、被相続人が有価証券の口座を開設した機関名が分かります。
手数料は6,050円で、被相続人の死亡と自身が相続人であることを証明する書類などが必要となり、開示までの期間は2~3週間です。口座開設をしたときの住所から特定されるため、過去のすべての住所で確認しましょう。別の住所で開示請求する場合、追加の手数料は1,100円/件です。
非上場株式の場合は、証券会社を仲介しないため、株式を発行している会社に直接確認を行う必要があります。
ゴルフ会員権やリゾート会員権なども相続財産となる場合があります。発行会社からの郵便物や通帳の引き落とし(会費)などから保有状況を確認しましょう。
特許権などの知的財産権については、下記のサイトにおいて被相続人の名前で検索すれば保有状況を確認できます。
≫特許情報プラットフォーム
著作権は届出の義務がないため網羅的に調べる方法はありませんが、所得税確定申告書や通帳の入金履歴に印税収入があるかどうかなどで確認できます。
2-7:⑦ 貴金属や自動車などの動産について調べる
次に、貴金属や自動車などの動産について調べましょう。
財産的な価値が高い自動車、貴金属、宝石、家具、骨董品、美術品、着物なども相続財産です。自宅や事業所、金融機関の貸金庫の中を丁寧に探しましょう。
また、自動車などは自宅以外の場所に保管している可能性もあるので、自動車検査証や保険証書のような書類も目を通す必要があります。
2-8:⑧ 評価額を算出し財産目録を作成する
すべての相続財産の特定が終わったら、それぞれの評価額を算出し、財産目録(全財産を一覧にしたもの)を作成しましょう。
遺産分割の話し合いをスムーズに進めるためだけではなく、相続税の申告が必要かどうかを確認でき、実際申告するときの書類作成にも役立ちます。
まずは評価額の算出をします。遺産分割の基準とする評価額は相続人間の話し合いで決めますが、時価(取引価格)が一般的です。相続税の基準となる評価額は死亡時の時価が基本ですが、国税庁が公表する「財産評価基本通達」に示される評価方法で算出する必要があります。
参考:国税庁「相続税財産評価に関する基本通達」
以下の表に、主な財産の評価額の算出方法をまとめました。
財産の種類 | 評価額の算出方法 |
---|---|
預貯金 | ・普通預金の場合 相続開始日(死亡日)の残高 ・定期預金の場合 [死亡日の残高]+[死亡日までの利息]-[利息にかかる所得税額] |
債務 | 死亡日の残債額 |
家屋 | 固定資産税評価額 ※固定資産税納税通知書に記載 |
土地 | ・路線価がある場合(主に市街地) [路線価]×[土地面積]×[各種補正率] ・路線価がない場合(主に郊外) [固定資産税評価額]×[評価倍率] ※[路線価]と[評価倍率]は以下のサイトで確認 国税庁「路線価図・評価倍率表」 |
上場株式 | 下記1~4の中で最も低い価格 1.死亡日の終値 2.死亡月の終値の平均額 3.死亡前月の終値の平均額 4.死亡前々月の終値の平均額 |
非上場株式 | 発行会社の規模や株主の種類に応じて複数の評価方式を用いる 参考:国税庁「取引相場のない株式の評価」 |
投資信託 | 死亡日に解約請求した場合に証券会社から支払われる価格 |
公社債 | 公社債の種類に応じて評価方法が異なる 参考:国税庁「利付公社債・割引発行の公社債の評価」 |
ゴルフ会員権 | 死亡日の取引価格の7割 |
特許権 | 特許の使用状況や収入に応じて評価方法が異なる 参考:国税庁「特許権及びその実施権」 |
著作権 | [年平均印税収入]※1×0.5×[評価倍率]※2 ※1 死亡前3年間における平均額 ※2 今後予想される印税収入期間(印税の支払い者などに相談)に応じた「基準年利率」※3による「複利年金原価率」※4 ※3 以下のサイトで確認 参考:国税庁「令和5年分の基準年利率について」 ※4 上記サイトの下にある死亡月の「複利表」で確認 |
自動車 | 自動車買取店での見積価格 |
貴金属等 | 鑑定価格 |
とくに土地(形状により異なる)、非上場株式、公社債、特許権などの評価額の算出は非常に複雑なため、相続税の申告が必要なら専門家に相談するのがオススメです。
評価額の算出が終わったら、財産目録を作成します。決まった様式はありませんが、すべての財産について、財産の種類と特定できる詳細情報、数量、評価額を漏れなく記載してください。全財産に共通する評価額以外では、主に以下のような情報があります。
- 預貯金…金融機関名、支店名、種類(普通・定期)、口座番号
- 不動産…所在地、地目(土地、建物、借地権など)、面積、利用状況、抵当権
- 債務…債権者、借入総額、毎月の返済額
- 有価証券…種類(株式、投資信託など)、発行会社名、証券会社名、支店名、数量
財産目録のテンプレートを無料ダウンロードできるサイトもあるので、利用してもよいでしょう。
3章:相続財産調査を専門家に依頼すべき4つのケース
相続財産調査は、自分でするには非常に負担の大きい作業になるため、専門家への依頼を検討するのもオススメです。とくに専門家に依頼すべきなのは、以下の4つのケースです。
- 平日にあまり時間がとれない
- 遠方に住んでいる
- 相続財産が多い
- 相続財産に不動産がある
それぞれ説明します。
3-1:平日にあまり時間がとれない
1つ目は平日にあまり時間がとれない場合です。
2章で説明したとおり、銀行や証券会社などに問い合わせをする必要がありますが、これらは平日の日中にしか営業していない場合がほとんどだからです。
相続財産調査は仕事や家のことで忙しいほとんどの人にとって負担が大きく、とくに平日に時間がとれないと調査を進めるのが難しいため、専門家に任せる方がよいでしょう。
3-2:遠方に住んでいる
2つ目は被相続人の自宅から遠方に住んでいる場合です。
郵送でできる調査も多いですが、慣れていないと書類の不備や不足が発生しやすく、やり直す場合に郵送の時間が余計にかかってしまうからです。
専門家に依頼すれば、郵送の手続きもスムーズに進めてくれ、何度も現地に行かなくてすみます。
3-3:相続財産が多い
3つ目はプラスの財産、マイナスの財産に限らずに相続財産が多い場合です。
相続財産調査は一つひとつの財産の所有状況を地道に調べるしかないため、相続財産が多いと時間がかかり、調査漏れが生じる可能性が高いからです。
専門家にすべて依頼できれば、期限内に正確かつスムーズに対応してもらえるでしょう。
3-4:相続財産に不動産がある
4つ目は相続財産に不動産がある場合です。
不動産があると、所有の状況を調べるだけでなく、評価額の算出や相続後の名義変更手続きが必要になり、複雑な作業が多くなるからです。
金銭と違い、どのように遺産分割をするかも難しい判断になるため、不動産の相続に強い専門家に依頼するのがいいでしょう。
4章:依頼する専門家の選び方と費用の相場
相続財産調査を依頼できるのは以下の4つの専門家です。ただし、その他の相続手続きについてそれぞれできることが違うため、状況に応じて以下のように選ぶとよいでしょう。
- 相続税が発生するなら「税理士」
- 相続人同士の争いが起きそうなら「弁護士」
- 不動産を相続するなら「司法書士」
- 相続財産調査のみの依頼なら「行政書士」
それぞれ説明します。
4-1:相続税が発生するなら「税理士」|遺産総額の0.5~1%程度
プラスの相続財産が多く、相続税が発生するなら「税理士」を選ぶとよいでしょう。
相続財産の総額が「3,000万円+600万円×(法定相続人の人数)」を超えると、相続税の申告が必要です。
「税理士」は相続財産の評価や相続税の申告を専門としています。「税理士」に依頼すれば、財産評価を適切に行い節税の制度を最大限に活用してくれるため、申告漏れを防ぐだけでなく、無駄な相続税を払う必要がなくなります。
なお「税理士」による相続財産調査単体の費用相場は遺産総額の0.5~1%程度です。
4-2:相続人同士の争いが起きそうなら「弁護士」|10~30万円程度
遺産分割協議で相続人同士の争いが起きそうなら「弁護士」を選ぶといいでしょう。
遺産分割協議でもめたとき、相続人の代理人として交渉や訴訟の手続きが行えるのは「弁護士」だけです。
また、他の専門家と比べ、ほぼすべての相続手続きに対応できるため、費用をかけられるならワンストップで任せることもできます。
なお、「弁護士」による相続財産調査単体の費用相場は10~30万円程度です。
4-3:不動産を相続するなら「司法書士」|10~30万円程度
相続税が発生せず相続人間の争いもない場合で、相続財産に不動産が含まれるなら「司法書士」を選ぶといいでしょう。
「司法書士」は不動産登記を専門としています。不動産を相続する場合は相続登記が義務になるため、「司法書士」に依頼することをオススメします。その他、幅広い相続手続きに対応できることも「司法書士」の特徴です。
なお、「司法書士」による相続財産調査単体の費用相場は10~30万円程度です。
4-4:相続財産調査のみの依頼なら「行政書士」|2~5万円程度
相続財産調査のみを依頼したいのであれば「行政書士」を選ぶといいでしょう。
「行政書士」による相続財産調査単体の費用相場は2~5万円程度であり、他の専門家と比べて安価だからです。
ただし、できることは限られます。後で相続登記や相続税の申告を専門家に依頼したいとなった場合は別に依頼する必要があり、割高になる可能性があるので注意が必要です。
まとめ:相続財産調査は専門家に依頼するのがオススメ
自分で相続財産を調査する場合の進め方は、以下の8ステップです
① 対象となる財産を把握する
② 家の中にある手がかりを探して集める
③ 預貯金について調べる
④ 借金などの債務について調べる
⑤ 不動産について調べる
⑥ 有価証券その他の権利について調べる
⑦ 貴金属や自動車などの動産について調べる
⑧ 評価額を算出し財産目録を作成する
ただし、これらの作業は大変な手間と時間を必要とし、一般の人には理解するのも難しい複雑な作業も含まれています。
「相続放棄」や「限定承認」の判断の期限となる死後3か月以内にすべての財産を漏れなく調査するために、専門家に相談または依頼することをオススメします。
専門家の選び方と費用の相場は以下のとおりです。
- 相続税が発生するなら「税理士」|遺産総額の0.5~1%程度
- 相続人同士の争いが起きそうなら「弁護士」|10~30万円程度
- 不動産を相続するなら「司法書士」|10~30万円程度
- 相続財産調査のみの依頼なら「行政書士」|2~5万円程度
相続財産調査が不十分だと後々のトラブルや不利益につながる可能性があるため、調査の内容を十分に理解し、確実な方法で進めていきましょう。